出社したくなるオフィスとは?特徴や作り方のポイントを解説

2026年05月14日

コロナ禍をきっかけにリモートワークが広く普及しましたが、近年は「出社回帰」の動きが加速しています。しかし、従業員に出社を強制するだけでは、エンゲージメントの低下や離職リスクにつながりかねません。

そこで注目されているのが、従業員が自発的に「行きたい」と感じる出社したくなるオフィスの実現です。

本記事では、出社したくなるオフィスが求められる背景や、企業が得られるメリットを解説します。

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近年「出社したくなるオフィス」が求められている背景

近年「出社したくなるオフィス」が求められている背景

コロナ禍で普及したリモートワークですが、総務省の令和6年通信利用動向調査によると、企業のテレワーク導入率は47.3%と2022年以降は減少が続いており、出社回帰の流れが明確になっています。その主な要因は、リモートワーク下でのコミュニケーション不足やチームの一体感低下といった課題です。

ただし、出社を義務化するだけでは従業員の不満を招きかねません。そこで求められているのが、「行かなければならない場所」ではなく「行きたくなる場所」としてオフィスを再設計するという発想です。出社する目的が明確で、オフィスならではの価値がある空間こそが、出社したくなるオフィスの本質といえます。

参考:総務省「令和7年版 情報通信白書|テレワーク・オンライン会議

出社したくなるオフィスづくりが企業にもたらす5つのメリット

出社したくなるオフィスづくりが企業にもたらす5つのメリット

出社したくなるオフィスを整備することで、企業は以下の5つのメリットを得られます。

  • ・チームの一体感・帰属意識が高まる
  • ・対面コミュニケーションで意思決定が速くなる
  • ・従業員エンゲージメントが向上し人材が定着する
  • ・偶発的な交流から新しいアイデアが生まれる
  • ・業務効率・生産性の向上が期待できる

それぞれ詳しく見ていきましょう。

1.チームの一体感・帰属意識が高まる

リモートワークでは、チャットやオンライン会議が中心になるため、業務連絡は成立しても、チームとしての連帯感を築くのに時間がかかるという課題があります。

一方、オフィスで直接顔を合わせることで、ちょっとした雑談や業務外の会話を通じて相互理解が深まり、信頼関係が醸成されます。たとえば、ランチの時間に別部署のメンバーと交流することで、お互いの業務への理解が進み、部門を超えた協力体制が生まれやすくなります。

企業文化やビジョンも、同じ空間で働くからこそ自然に共有されるものです。出社したくなるオフィスは、組織の一体感を高めるための起点となります。

2.対面コミュニケーションで意思決定が速くなる

テキストベースのやりとりでは、微妙なニュアンスが伝わりにくく、確認の往復に時間がかかることがあります。たとえば、メールやチャットで「この方針でいいですか?」と送っても、返信を待つ間に半日以上かかるケースは珍しくありません。

オフィスであれば、気になったことをその場で確認し、すぐに合意形成を進められます。対面での会話は非言語情報(表情・声のトーンなど)も含むため、誤解が生じにくいという利点もあります。

3.従業員エンゲージメントが向上し人材が定着する

快適で魅力的なオフィス環境は、従業員の「この会社で働き続けたい」という気持ちを後押しします。株式会社テクノルの調査では、オフィス環境の整備による効果として「働く意欲が高まる」「会社へのエンゲージメントが高まる」といった回答が得られています。

たとえば、リフレッシュスペースやカフェコーナーを設けたオフィスでは、従業員が気分転換しながら働けるため、仕事への満足度が高まり、結果として離職率の低下につながります。出社したくなるオフィスへの投資は、人材確保の面でも有効な施策です。

参考:テクノル「オフィスワーカーの4割が完全出社|働き方の多様化が進む一方で浮かび上がる”出社継続”の現実

4.偶発的な交流から新しいアイデアが生まれる

リモートワークでは、業務上必要な相手とだけコミュニケーションを取りがちです。しかし、新しいアイデアやイノベーションは、計画されていない偶然の出会いから生まれることが少なくありません。

オフィスのカフェスペースやオープンエリアで、別のプロジェクトのメンバーと雑談しているうちに、思わぬ解決策のヒントが見つかることもあります。このような「セレンディピティ(偶然の発見)」が生まれやすいのは、オフィスならではの強みです。

5.業務効率・生産性の向上が期待できる

自宅の作業環境は人によって差があり、集中できるスペースやモニター・デスクなどの設備が十分でないケースも多いです。一方、オフィスには業務に最適化されたネットワーク環境や高性能なモニター、会議室などがそろっています。

また、同じ空間にメンバーがいることで、ちょっとした質問や確認をすぐに行えるため、作業のつまずきが早期に解消されます。特に、専門性の高い業務や高機能な機材を必要とする開発業務では、オフィス環境の生産性優位は大きいといえるでしょう。

出社したくなるオフィスに共通する6つの特徴

出社したくなるオフィスに共通する6つの特徴

出社したくなるオフィスには、いくつかの共通する特徴があります。ここでは、以下の6つのポイントを紹介します。

  • ・働き方に合わせて選べる多様なワークスペース
  • ・コミュニケーションが自然に生まれる動線・レイアウト
  • ・集中できる環境とリフレッシュ空間の両立
  • ・企業文化やブランドを体現するデザイン・内装
  • ・快適なITインフラとハイブリッドワーク対応
  • ・出社でしか得られない付加価値・体験の提供

それぞれ詳しく見ていきましょう。

1.働き方に合わせて選べる多様なワークスペース

出社したくなるオフィスでは、すべての従業員が同じデスクに向かうのではなく、業務内容や気分に応じて働く場所を選べることが重要です。具体的には、集中ブース、コラボレーションスペース、カフェ風のカウンター席など、用途に応じたゾーニングが行われています。

こうした考え方は「ABW(Activity Based Working)」と呼ばれ、活動内容に合わせて場所を選ぶワークスタイルとして多くの企業で導入が進んでいます。フリーアドレスを組み合わせることで、オフィススペースの効率化にもつながります。

2.コミュニケーションが自然に生まれる動線・レイアウト

部署ごとに壁やパーティションで区切られたオフィスでは、別の部門のメンバーと交流する機会が限られます。出社したくなるオフィスでは、人の動線上にオープンスペースやマグネットスペース(人が自然に集まる場所)を配置して、偶発的な対話を促す工夫がされています。

たとえば、コピー機やコーヒーマシンの近くにスタンディングテーブルを設置することで、他部署の従業員同士がちょっとした会話を交わす機会が増えます。こうした小さな仕掛けの積み重ねが、組織全体のコミュニケーション活性化につながります。

3.集中できる環境とリフレッシュ空間の両立

オープンなオフィスだけでは、周囲の会話や電話の音が気になり、集中作業が進まないことがあります。出社したくなるオフィスでは、静音設計の個人ブースやパーティション付きデスクを用意し、集中が必要な作業にも対応できるようにしています。

同時に、グリーンスペースやリラクゼーションエリア、カフェスペースなどのリフレッシュ空間も欠かせません。適度な気分転換ができる環境は、長時間の業務における集中力の維持に役立ちます。「集中」と「リフレッシュ」の両方を選べることが、出社する動機づけになるのです。

4.企業文化やブランドを体現するデザイン・内装

オフィスのデザインや内装は、企業の理念やビジョンを従業員に伝える重要な手段です。たとえば、環境問題に取り組む企業であれば自然素材を多く使ったデザインを取り入れたり、クリエイティブな企業であれば自由な発想を促すアート作品を飾ったりすることで、空間そのものが企業文化を体現する「メッセージ」になります。

こうした工夫は、従業員が自社の価値観を日常的に感じられるようになり、所属意識や誇りの向上につながります。

5.快適なITインフラとハイブリッドワーク対応

どの席に座ってもストレスなく業務ができる安定したネットワーク環境は、出社したくなるオフィスの基盤です。フリーアドレスを導入する場合は、有線LANに依存しないWi-Fi環境の整備が特に重要になります。

また、リモート勤務の従業員と出社している従業員がシームレスに協働するために、Web会議用の個室ブースや高品質なカメラ・マイクの設置が求められます。出社していない従業員との情報格差をなくすIT環境の整備は、ハイブリッドワーク時代の必須要件です。

6.出社でしか得られない付加価値・体験の提供

「自宅でもできる仕事をわざわざオフィスでする必要があるのか」という疑問を払拭するには、オフィスでしか得られない体験の提供が重要です。たとえば、社内ワークショップや勉強会、ランチ会などの定期イベントは、出社する動機を高めます。

ビルに入居する企業向けの食堂やフィットネスジムの利用も、出社の付加価値となります。健康経営の観点から、食事や運動をサポートする設備を充実させることは、従業員の健康維持と満足度向上の両面で効果があります。

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出社したくなるオフィスづくりで失敗しないための3つの注意点

出社したくなるオフィスづくりで失敗しないための3つの注意点

出社したくなるオフィスを実現するには、空間のデザインだけでなく、進め方にも注意が必要です。以下の3つの注意点を押さえましょう。

  • ・目的とコンセプトを明確にしてから設計する
  • ・従業員の声をヒアリングして反映する
  • ・オフィス環境の変化に合わせたセキュリティ対策を整備する

それぞれ詳しく見ていきましょう。

1.目的とコンセプトを明確にしてから設計する

「おしゃれなオフィスにすれば人が集まるだろう」と、デザイン先行でリニューアルを進めると失敗しがちです。まず「なぜ出社してほしいのか」「出社することでどんな成果を期待するのか」という目的を明確にすることが重要です。

たとえば、目的が「部門間コミュニケーションの促進」なのか「集中業務の生産性向上」なのかによって、最適なレイアウトは大きく異なります。経営層の意図と現場の実態をすり合わせたうえで、コンセプトを設定しましょう。

2.従業員の声をヒアリングして反映する

オフィスを実際に使うのは従業員です。経営層やファシリティ担当だけで設計を進めると、現場の実態と合わず「使われないスペース」が生まれてしまうことがあります。

そのため、オフィスの計画段階でアンケートやワークショップを実施し、現場の不満や要望を吸い上げるプロセスが不可欠です。たとえば「Web会議用の個室が足りない」「静かに集中できる場所がほしい」といった具体的なニーズを把握し、設計に反映することで、出社率の向上につながりやすくなります。

3.オフィス環境の変化に合わせたセキュリティ対策を整備する

フリーアドレスやオープンスペース化を進めると、固定席時代にはなかったセキュリティリスクが発生します。たとえば、不特定の席でPCを開くことによる画面の覗き見、端末の置き忘れ、共有ネットワークへの不正アクセスなどが挙げられます。

テクノルの調査でも、完全出社を求める企業の理由として「セキュリティ面の都合」が上位に挙がっています。オフィスのレイアウト変更やフリーアドレスの導入にあたっては、必ずセキュリティの観点からリスクを洗い出し、対策を同時に進める必要があります。

参考:テクノル「オフィスワーカーの4割が完全出社|働き方の多様化に伴う社内セキュリティに関する調査

出社したくなるオフィスを支えるセキュリティ対策4選

出社したくなるオフィスを支えるセキュリティ対策4選

出社したくなるオフィスをつくるうえで、見落としがちなのがセキュリティ対策です。特にフリーアドレスやオープンスペースを導入する場合は、固定席時代とは異なるリスクに対応する必要があります。ここでは、押さえておくべき4つの対策を紹介します。

  • ・ネットワーク分離とゼロトラスト環境の構築
  • ・入退室管理・物理セキュリティの強化
  • ・端末管理とデータ保護の徹底
  • ・従業員のセキュリティ意識を高める教育・ルール整備

それぞれ詳しく見ていきましょう。

1.ネットワーク分離とゼロトラスト環境の構築

フリーアドレス化に伴い、全社的にWi-Fiを導入するケースが増えています。しかし、来客用ゲストWi-Fiと社内業務用ネットワークが十分に分離されていないと、外部からの不正アクセスのリスクが高まります。

ネットワークのセグメント分離(業務用・来客用・IoT機器用など)を行い、それぞれにアクセス制御を設定することが基本です。さらに、従来の「社内ネットワークは安全」という前提に依存しない「ゼロトラスト」の考え方も重要になっています。

ゼロトラストとは、すべての通信を信頼せず、常にユーザーやデバイスの認証・検証を行うセキュリティモデルです。この考え方を取り入れることで、フリーアドレスで席が変わっても、リモートから接続しても、場所に依存しない一貫したセキュリティを維持できます。

参考:総務省「テレワークセキュリティガイドライン

2.入退室管理・物理セキュリティの強化

オープンなオフィスは交流を促す一方で、誰でもあらゆるエリアにアクセスできてしまうリスクを抱えています。特に、個人情報や機密情報を扱うエリアでは、物理的なアクセス制御が不可欠です。

具体的には、ICカードや顔認証によるエリア別の入退室管理を導入し、オープンエリアと機密区画を明確にゾーニングします。たとえば、経理や人事など個人情報を扱う部門の執務エリアには、認証がなければ入室できない仕組みを設けることで、フリーアドレスの利便性を保ちながらセキュリティを担保できます。

3.端末管理とデータ保護の徹底

フリーアドレスのオフィスでは、ノートPCやタブレットを持ち歩いて作業するのが基本です。そのため、端末の紛失・盗難によるデータ流出のリスクが従来以上に高まります。

MDM(モバイルデバイス管理)を導入し、紛失時には遠隔ロック・遠隔消去ができる体制を整えておきましょう。あわせて、DLP(情報漏えい対策)ツールで機密ファイルの外部持ち出しを制御することも有効です。端末のディスク暗号化やUSBポートの使用制限といった基本対策も、改めて確認しておく必要があります。

4.従業員のセキュリティ意識を高める教育・ルール整備

どれだけ技術的な対策を整えても、従業員のセキュリティ意識が低ければ効果は限定的です。フリーアドレスでは「離席時にPCをロックする」「プライバシーフィルターを使用する」「書類を放置しない(クリアデスク)」など、固定席時代よりも高い意識が求められます。

フリーアドレスに対応したセキュリティガイドラインを策定し、全従業員に周知徹底することが重要です。加えて、定期的なセキュリティ研修やフィッシングメールの訓練を実施することで、日常的な意識向上を図りましょう。

まとめ

まとめ

出社したくなるオフィスとは、単に見た目がおしゃれな空間ではなく、従業員が「ここで働きたい」と自発的に感じられる環境のことです。多様なワークスペースやコミュニケーションを促す動線、快適なITインフラといった空間づくりに加え、フリーアドレス化に伴うネットワーク分離や端末管理などのセキュリティ対策も欠かせません。

オフィスの計画段階で目的を明確にし、従業員の声を反映しながら、セキュリティ面の整備も並行して進めることが、出社したくなるオフィスを成功に導くポイントです。

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