オフィス移転を検討し始めたものの、「自社の移転目的をどう整理すればいいのか」と悩んでいる担当者の方は多いのではないでしょうか。
オフィス移転の目的は、企業の規模や業種によってさまざまです。しかし、目的が曖昧なまま移転を進めると、物件選びの基準がぶれたり、移転後に「思っていた効果が得られなかった」という事態に陥りかねません。
本記事では、企業がオフィス移転を決断する主な理由を整理したうえで、目的を明確にすべき理由や、移転先の選び方まで解説します。
オフィス移転の目的とは?企業が移転を決断する主な理由
オフィス移転の目的は企業ごとに異なりますが、大きく分けると以下の8つに分類できます。
- ・従業員の増加・組織拡大への対応
- ・生産性・従業員モチベーションの向上
- ・企業ブランディングの強化
- ・コスト削減・経費の最適化
- ・新しい働き方・ハイブリッドワークへの対応
- ・建物の老朽化・賃貸借契約の満了
- ・オフィスの集約・分散による業務効率化
- ・ESG・カーボンニュートラルへの取り組み
JLL日本の調査によると、2022年には東京エリアのオフィス移転事例の90%以上がポジティブな理由(拡張・環境改善・人材確保など)によるものでした。移転は単なる引越しではなく、企業の成長戦略に直結する経営判断といえます。それぞれ詳しく見ていきましょう。
参考:JLL日本「オフィス移転の目的が変化してきた」
1. 従業員の増加・組織拡大への対応
事業成長に伴い従業員数が増えると、既存のオフィスでは座席や会議室が不足し、業務に支障が出るケースがあります。ザイマックス不動産総合研究所の調査でも、オフィス移転・入居の種類として「拡張移転」が最も多いという結果が出ています。
なお、事務所衛生基準規則(第2条)では、労働者1人あたりの気積(空気の総量)を10㎥以上確保することが義務づけられています。天井高2.5mのオフィスなら1人あたり約4㎡(約1.2坪)が最低ラインですが、これはあくまで法定の最低基準です。快適に業務を行うには、一般的に1人あたり2.5〜3坪程度が推奨されています。
将来の採用計画も見据えて、余裕のあるスペースを確保できる物件へ移転することが重要です。
参考:ザイマックス不動産総合研究所「オフィス移転にみる企業行動と働き方改革」
参考:e-Gov法令検索「事務所衛生基準規則(昭和四十七年労働省令第四十三号)」
2. 生産性・従業員モチベーションの向上
オフィス環境は、従業員の集中力やモチベーションに大きく影響します。レイアウトの見直しやリフレッシュスペースの設置など、働く環境を刷新することで生産性の向上が期待できます。
実際にザイマックスの調査では、新オフィス入居時に約60%の企業が働き方改善を目的とした新たなレイアウトを導入しています。具体的には、オープンなミーティングスペースやリフレッシュスペースの設置、ABW(業務内容に応じた場所選び)などが挙げられます。
快適なオフィスは離職率の低下や採用力の強化にもつながるため、人材確保の観点からも有効な投資です。
参考:ザイマックス不動産総合研究所「オフィス移転にみる企業行動と働き方改革」
3. 企業ブランディングの強化
オフィスの所在地やビルの外観は、取引先や求職者に対する企業イメージに直結します。たとえば、IT企業なら渋谷・六本木、金融系なら丸の内・大手町など、同業種の企業が集まるエリアに移転することで業界内での信頼性を高められます。
ブランド力のあるエリアに移転すれば、事業が順調であることを対外的にアピールでき、営業や採用の面でもプラスに働きます。移転先の立地そのものが、企業の成長メッセージになるのです。
4. コスト削減・経費の最適化
賃料はオフィス運営における大きな固定費です。より賃料の低いエリアへの移転や、テレワーク普及に伴う余剰スペースの縮小など、面積と立地を最適化することで月々のコストを大幅に削減できます。
三菱地所リアルエステートサービスの調査でも、コスト削減はコロナ禍前後を通じてオフィス移転理由の上位に位置しています。近年では、コロナ禍前の高水準な賃料と現在の市場相場を比較し、適正な賃料の物件に移転するケースも見られます。
参考:三菱地所リアルエステートサービス「オフィス移転のトレンドとは?企業の移転傾向や事例を調査!」
5. 新しい働き方・ハイブリッドワークへの対応
テレワークの定着に伴い、「毎日全員が出社する」ことを前提としないオフィス設計が求められるようになりました。フリーアドレスやABW(Activity Based Working)を導入するために、既存オフィスのレイアウトでは対応しきれず、移転を決断する企業が増えています。
具体的には、固定席を廃止してフリーアドレスに切り替えたり、集中作業エリアとコラボレーションエリアを分けたりする設計です。出社したくなるオフィス環境を整えることが、ハイブリッドワーク時代の移転目的の一つになっています。
6. 建物の老朽化・賃貸借契約の満了
現在入居しているビルの老朽化や耐震性への不安は、移転を決断する大きなきっかけとなります。特に築年数が経過したビルでは、空調や電気設備の故障リスクが高まり、業務に支障をきたすおそれがあります。
また、定期借家契約の満了や、ビルの建て替え・再開発に伴い退去を求められるケースも少なくありません。三菱地所リアルエステートサービスの調査でも、「建替え・再開発」は移転理由の上位に挙がっています。契約更新のタイミングは、賃料の見直しも含めた移転検討の好機といえるでしょう。
参考:三菱地所リアルエステートサービス「オフィス移転のトレンドとは?企業の移転傾向や事例を調査!」
7. オフィスの集約・分散による業務効率化
複数の拠点に分散しているオフィスを一箇所に集約することで、部門間の連携を強化し、管理コストを削減できます。特にグループ会社や関連部門が別々のビルに入っている場合、集約による効率化のメリットは大きいでしょう。
一方で、BCP(事業継続計画)の観点から、あえて拠点を分散させてリスクを低減する企業もあります。たとえば、本社機能の一部を地方拠点に移すことで、災害時にも事業を継続できる体制を構築するケースが該当します。
8. ESG・カーボンニュートラルへの取り組み
近年、ESG(環境・社会・企業統治)を重視した経営が広がるなかで、環境配慮型のオフィスビルへ移転する企業が増えています。日本政府は2050年までに温室効果ガスの排出を実質ゼロにするカーボンニュートラルを宣言しており、企業にも具体的な取り組みが求められています。
具体的には、ZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)やCASBEE・LEED認証を取得したビルへの移転が選択肢となります。環境に配慮したオフィスは、投資家からのESG評価の向上や、従業員の環境意識の向上にもつながるでしょう。
参考:環境省「オフィスビル テナント単位で再エネ100%を実現する新手法」
オフィス移転の目的を明確にすべき3つの理由
オフィス移転は多くの費用と時間がかかる一大プロジェクトです。「なんとなく今のオフィスが不便だから」という漠然とした理由で進めてしまうと、移転後に後悔する可能性があります。ここでは、目的を明確にすべき3つの理由を解説します。
- ・移転先の選定基準がぶれなくなる
- ・社内の合意形成・稟議が通りやすくなる
- ・移転後の効果測定ができる
それぞれ詳しく見ていきましょう。
1. 移転先の選定基準がぶれなくなる
移転の目的が「コスト削減」なのか「採用力の強化」なのかによって、選ぶべきエリアやビルのグレード、必要な面積はまったく異なります。目的を最初に明確にしておくことで、物件比較の判断軸がぶれなくなり、効率的に候補を絞り込めます。
たとえば、コスト削減が目的であれば郊外エリアや面積の縮小が優先になりますし、ブランディング強化が目的なら都心の一等地が候補になります。目的が定まっていれば、物件選びに迷う時間を大幅に短縮できるでしょう。
2. 社内の合意形成・稟議が通りやすくなる
オフィス移転は経営判断であり、経営層への提案には明確な根拠が求められます。「なぜ移転するのか」「移転によって何が改善されるのか」を論理的に説明できなければ、稟議はなかなか通りません。
また、従業員に対しても移転の目的を丁寧に共有することが大切です。通勤経路の変更など従業員への影響も大きいため、納得感のある説明がなければ不満につながるおそれがあります。
3. 移転後の効果測定ができる
目的を定量的なKPIに落とし込んでおくと、移転後に成果を客観的に評価できます。たとえば「一人当たりの賃料を20%削減する」「従業員満足度を10ポイント向上させる」といった数値目標を設定しておくのが有効です。
効果測定の仕組みがあれば、移転が経営にもたらした成果を可視化でき、今後のオフィス戦略にも活かせます。目的なき移転では、投資対効果を検証する基準がなく、成功か失敗かの判断もできません。
目的別に見るオフィス移転先の選び方
移転の目的によって、重視すべき移転先の条件は大きく変わります。
| 移転の目的 | 重視すべき選定基準 | 具体例 |
|---|---|---|
| コスト削減 | 賃料の低さ、面積の適正化 | 郊外エリアへの移転、テレワーク導入による面積縮小 |
| 採用力・ブランディングの強化 | 立地のブランド力、交通アクセス | 都心の一等地やターミナル駅近くのビル |
| 生産性・モチベーション向上 | ビルのスペック、設備の充実度 | フリーアドレス対応のフロア、リフレッシュスペース付きビル |
| 組織拡大への対応 | 面積の広さ、将来の増床余地 | 同じビル内で追加フロアを借りられる物件 |
| BCP・拠点分散 | 災害リスクの低さ、地方アクセス | 地方都市への本社機能の一部移転 |
| ESG・環境対応 | 環境認証の取得状況 | ZEB認証・CASBEE Sランク取得ビル |
目的が複数ある場合は、優先順位をつけることが重要です。たとえば、「コスト削減」と「採用強化」は選定条件が相反するため、どちらを最優先にするかを経営判断で決める必要があります。
オフィス移転を成功させるためのポイント
目的が明確になったら、次は移転計画の実行段階です。ここでは、オフィス移転を成功に導くための4つのポイントを紹介します。
- ・移転目的・課題を社内で共有する
- ・スケジュールに余裕を持って計画する
- ・補助金・助成金を活用する
- ・オフィス移転の専門業者に相談する
それぞれ詳しく見ていきましょう。
1. 移転目的・課題を社内で共有する
移転の目的は、経営層だけで決めるのではなく、現場の声もヒアリングしたうえで擦り合わせることが大切です。部署によって抱えている課題は異なるため、総務・人事・IT部門など部門横断のプロジェクトチームを結成して進めるのが理想的です。
社内アンケートやヒアリングを通じて「現オフィスの不満点」「新オフィスへの要望」を収集すれば、移転後のミスマッチを防げます。目的と課題が全社で共有されていれば、移転プロジェクトもスムーズに進行するでしょう。
2. スケジュールに余裕を持って計画する
オフィス移転は、物件探しから入居完了まで一般的に6か月〜1年程度かかります。原状回復工事や各種届出手続き、IT環境の構築など、見落としがちなタスクも多いため、余裕を持ったスケジュール設計が不可欠です。
特に、現オフィスの解約予告期間(通常6か月前)を考慮し、新旧オフィスの賃料が二重にかからないよう調整する必要があります。スケジュールが逼迫すると、判断を誤ったり追加コストが発生したりするリスクが高まります。
3. 補助金・助成金を活用する
オフィス移転には多額の費用がかかりますが、国や自治体が提供する補助金・助成金を活用すれば、コスト負担を軽減できる可能性があります。代表的な制度には、ものづくり補助金やIT導入補助金、各自治体の企業立地促進補助金などがあります。
注意点として、補助金・助成金は原則「後払い」であり、移転時にはまず全額を自社で負担する必要があります。申請時期や要件は制度ごとに異なるため、移転計画の早い段階で情報収集を始めることが重要です。
4. オフィス移転の専門業者に相談する
物件選定から内装設計、引越し作業、原状回復までをワンストップで対応できる専門業者に依頼すれば、社内の負担を大幅に減らせます。特にオフィス移転の経験が少ない担当者にとっては、専門家のサポートが大きな助けになるでしょう。
移転の目的を専門業者と共有することで、目的に合った最適な物件やレイアウトプランの提案を受けられます。
まとめ
オフィス移転の目的は、従業員の増加対応やコスト削減、ブランディング強化、働き方改革への対応など企業によってさまざまです。重要なのは、移転を検討する段階で目的を明確にし、社内で共有することです。目的が定まれば移転先の選定基準がぶれなくなり、経営層への提案や従業員への説明にも説得力が生まれます。
スケジュールに余裕を持った計画と、補助金や専門業者の活用を組み合わせることで、目的に沿った移転を実現しやすくなるでしょう。
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